現代仮名遣い wikipedia|無料辞書
現代仮名遣い(げんだいかなづかい)は、に出された内閣告示「現代かなづかい」を改定して
1986年7月1日に昭和61年内閣告示第1号として公布された、
日本語を表記する一つの方法のこと。
◆ 性質
「現代かなづかい」(1946年)の「現代語をかなで書き表す場合の準則」という表現を「現代の国語を書き表すための仮名遣いのよりどころ」と改め、制限的な色彩を薄めたものが「現代仮名遣い」(1986年)である。
「現代かなづかい」は、表音式仮名遣いへ移行するまでのつなぎとして考えられていた。だが、仮名遣いの完全な表音化は実現されず、「現代かなづかい」はそのまま定着した。「現代仮名遣い」はそうした状況の追認であると言ってよい。
「現代仮名遣い」の内容は、「現代かなづかい」のそれとさほど変わっていないが、次のような相違点がある。
◆「現代かなづかい」との主な相違点
◇ 助詞「は」の表記
挨拶語としての「こんにちワ」「こんばんワ」の「ワ」をどう書くかについて「現代かなづかい」は言及していないが、「現代仮名遣い」では語例として「こんにちは/こんばんは」を明記し、「は」と書くことをはっきり主張している。これは当該の「は」に、
副助詞(
係助詞)としての意味・用法が残存していると見なす立場に立っているためである。つまり、「こんにちワ」は、例えば「こんにちは よいお日和でございます。」のような文の後半部分が省略されたものと考えるわけである。
由来についてはその通りだが、「こんにちワ/こんばんワ」は既に語源から離れ現在では専ら挨拶言葉(単独の
感動詞)として用いられていることから、「こんにちわ/こんばんわ」と書く方が適切であるとする反論もある。現に、同じ助詞の「は」を語源に持つ「いまワの際」や「来るワ来るワ」などは「は」ではなく「わ」と書く、と「現代仮名遣い」自身が注記しているのである。
ちなみに、ネット上の「語源サイト」の中には“「現代仮名遣い」が出される昭和61年までは、「こんにちわ/こんばんわ」が正しいとされていた”と記述しているものもあるが、それは誤りである。「現代かなづかい」では上記の通りこの二語に関して言及していない。そして、昭和50年1月(つまり「現代かなづかい」が有効であった時点)に出された「『ことば』シリーズ3 言葉に関する問答集1」(文化庁編集)では、はっきり「『現代かなづかい』では、『こんにちは』と書き表す。」「同じように、『コンバンワ』も『こんばんは』と書き表す。」と書いている。同時期の国語辞典を見ても、「広辞苑」のように特殊なもの(当時の広辞苑は完全な表音主義を取っていた。)を除いて、みな「こんにちは/こんばんは」という表記法を取っている。
◇ 「ぢ」「づ」の表記
「世界中」の「中」を「じゅう」と書くか「ぢゅう」と書くかについて、「現代かなづかい」は明記していない。その点について、「現代かなづかい」を補う形で出された「
正書法について」(昭和31年
国語審議会報告)では、「現代語としては、語構成の分析的意識のないものと考えられる」との理由で、「じゅう」と書くものとし、「『ぢゅう』と書く場合はない」としている。
「世界中」は本来、「世界」と「中」の複合語である。「現代かなづかい」では、原則「ぢ/づ」は使わず「じ/ず」を使うとした上で、「はな・ぢ(鼻+血)」や「みか・づき(三日+月)」のように二語の連合(及び「つづく(続)」や「ちぢむ(縮)」のような同音の連呼)により連濁が生じた語に限り、例外として「ぢ/づ」と書くとしている。「世界中」も二語の連合であるので「ぢ」と書くべきなのだが、その点については、上記のように「現代かなづかい」では言及されず「正書法について」で、いわば例外のさらに例外として「ぢゅう」ではなく「じゅう」と書くと決められたわけである。
しかし、その「現代語としては、語構成の分析的意識のないものと考えられる」との理由は、かなり主観的色彩の濃いものであり、客観的で明確な判断基準たり得ないという批判や異論は当時から多くあった。
国語審議会内部でも議論は紛糾していた。例えば、第3期国語審議会では、「現代かなづかい」を補強するものとして作成された「現代かなづかいの適用について」という成案を第29回総会(昭和30年11月10日)に提出した。この案は、「ぢ/づ」を適用する例を豊富に示したものであった(他に「オに発音されるほはおと書く。」を適用する語や、「助詞のはは,はと書くことを本則とする。」を適用するものの用例を示していた)が、総会において、「ぢ・じ」「づ・ず」の書き分けの基準が明確でないとの異論が出て、ついに決定するに至らなかったのである。そのような混乱状況の中で、翌年に出されたのが上記の「正書法について」という報告である。
その後「現代仮名遣い」では、「世界中」「稲妻」などの語(挙げられている語例の一覧は下記参照)について、「現代語の意識では一般に二語に分解しにくいもの等として、それぞれ、『じ』『ず』を用いて書くことを本則とし、『せかいぢゅう』『いなづま』のように『ぢ』『づ』を用いて書くこともできるものとする」という、玉虫色の基準を打ち出している。まとめれば「せかいじゅう/いなずま」が本則だが「せかいぢゅう/いなづま」も許容する、ということである。ただ、基準のあいまいさはいまだに残っており、「ゆうずう(融通)」のように
常用漢字の
音訓表や「現代仮名遣い」だけでは説明ができないものもあって、この問題に対する批判は今なお各方面から続いている。
次は、「現代仮名遣い」で、「じ/ず」を本則としながら、「ぢ/づ」も許容するとされた語例の一覧である。いずれも語源をたどれば「ち/つ」が二語の連合によって濁ったもの(あるいはそう目されているもの)である。
せかいじゅう(世界中)、いなずま(稲妻)、かたず(固唾)、きずな(絆)、さかずき(杯)、ときわず、ほおずき、みみずく
うなずく、おとずれる(訪れる)、かしずく、つまずく、ぬかずく、ひざまずく、あせみずく、くんずほぐれつ、さしずめ、でずっぱり、なかんずく、うでずく、くろずくめ、ひとりずつ、ゆうずう(融通)
◇ 「クワ・グワ・ヂ・ヅ」の取り扱い
「現代かなづかい」では、「注意一」として次の文言を掲げていたが、「現代仮名遣い」ではこれを掲げていない。
・ 「クワ・カ」「グワ・ガ」及び「ヂ・ジ」「ヅ・ズ」を言い分けている地方に限り、これを書き分けても差し支えない。
◆ 原則
「現代仮名遣い」は、以下の二つの原則によっている。
・おおまかに現代語の
音韻にしたがって語を書き表す。
・特定の語については、表記の慣習を尊重する。
歴史的仮名遣の表記を、現代語
音韻に基づく表音主義によって改めることによってできた仮名遣いであるので、完全な表音式表記ではない。
◆ 形式
「現代かなづかい」は
歴史的仮名遣の書き替えという形式をとっていた。「現代仮名遣い」は、「語を現代語の音韻に従って書き表すこと」を「原則」として優先的に説明し、「表記の慣習」を「特例」であるとして後から補足する形で説明している。
例として「ワ」と発音する単語は通常、「わ」と表記するが、助詞の「は」は「ワ」と発音するが「は」と表記する。助詞の「を」も同様に「お」と発音し「を」と表記する。助詞の「へ」も、「え」と発音し「へ」と表記する。
ある音の次に、その音の段と同じ母音が来るときで、かつ、その音が「オ」「エ」の場合は、通常は「う」「い」と表記する。
例:
・ 交換。コーカンと発音し、こうかんと表記。
・ 永久。エーキューと発音してえいきゅうと表記。
ただし、歴史的仮名遣で「ほ・を」が「オ」と発音されていた語は、母音部分を「お」と表記する。
例:狼。歴史的仮名遣での表記はおほかみで、オーカミと発音する。→現代仮名遣いではおおかみと表記。
歴史的仮名遣での「ゐ」は「い」に、「ゑ」は「え」に変換される。
◆ 批判
現代仮名遣いに対する批判として、おおよそ以下の二つが挙げられる。
#仮名遣いは発音を表すものではなく、言語を破壊する。
#漢字に依存していて、表音でない。
現代仮名遣いを表音主義に基づく、全ての言葉を発音通りに表記するものと考えるのは、いささか誤りである。完全なる表音でないとの批判は現代仮名遣い論者においてもあったが、あくまで「現代語音韻に基づく表音主義によって改めた」ものである。
漢字依存は何も現代仮名遣いに始まったことではなく、歴史的仮名遣いにおける「鋳ぬ・居る」の「い・ゐ」の使い分けを
金田一京助が「漢字に隠れ恥じ無きを得ているのではないか」と批判したことにも例があげられるが、これらの批判は結果として現代仮名遣いにも波及した。
・読み辛くなった。
・語源が分からなくなった。
・どう表記したらいいのか誰にも分からない言葉が多く生じた。
・五十音図と連関する動詞の活用を破壊した。
・同語異発音のゆとりを消した。
・拗音、促音を小さく書く表記法のせいで煩雑になった。
◇ 明治時代の現代仮名遣い論
明治時代にも国語教育を始めるにあたって、現代仮名遣い論はあったものの、「正書法・発音」などを混同した議論であった。
綴り字法の具体例をあげるならば、「え」と発音する「へ」や「わ」と発音する「は」が挙げられる。他にも英語では、「know・knife」の発音しないk、aの複数の発音などが挙げられる。
◆ 文法の変化
仮名遣いを改めることで、語幹が変化した単語が存在する。この存在は告示にも示されている。
例えば、「言う」は「いう」とは書いても、発音に沿って「ゆう」と書いては誤りである。この理由は原則として「語幹は変化させない意識がある」ことが挙げられる。
一方、「おめでとう」は正仮名では「おめでたう」と書き、接頭辞を取り除き「めでたい」の語幹を考えると、「めでた」が語幹となる。ところが、「おめでとう」にしては「めでと」が語幹であり、本来の語幹が変化している(仮名単位分析)。
◇ 濁音
・現代仮名遣い page1
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