経世論は
17世紀の後半に一応のまとまりを持った著作(
熊沢蕃山『
大学或問』など)が登場し、一つの思想領域として成立した。この時期の思想は、
士農工商の頂点に位置し、社会秩序の安寧を維持する責任を有するという武士身分の自意識を軸としており、
儒教的な徳治論に基づき、
「封建的な小農体制の維持」「勤倹節約による領主財政の安定化」が中心的主張となっていた。蕃山に続き、18世紀前半には
荻生徂徠、およびその門弟である
太宰春台が現れたが、春台の著作においては単純な
貴穀賤金論や尚農抑商策ではもはや状況に対応できないことが認識され、藩営専売策など幕藩体制の側から積極的に
市場経済に対応すべきことが述べられている(なお春台の主著『
経済録』は日本で初めて「経済」の語を書名とした著作として知られる)。